退職することを会社へ伝えたあとも、やることはかなり残っています。
「退職日は決まったから、あとは引き継ぐだけ」と考えていると、最終出社直前になって、次のようなことが起こります。
- 有給休暇をいつ取るのか決まっていない
- 後任者へ必要な情報が伝わっていない
- 会社から借りたものが自宅に残っている
- 退職後に必要な書類が分からない
- 健康保険や年金の切り替えを確認していない
円満退職で重要なのは、きれいな挨拶をすることより、必要な業務情報を共有し、自分の退職後の手続きの抜け漏れを減らすことです。
この記事では、退職意思を伝えたあとから退職日までにやることを、実務の順番で整理します。
雇用形態、会社の就業規則、加入している健康保険、退職後の状況によって必要な手続きは変わります。個別の法的判断ではなく、会社の人事・総務や公的機関へ確認するためのチェックリストとして使ってください。
1.最初に「退職日・最終出社日・有給取得日」を分けて決める
まず確認したいのは、退職日と最終出社日は同じとは限らないことです。最終出社のあとに残っている有給休暇を取得し、退職日を迎える場合もあります。
人事や上司と確認するときは、次の4つを分けて整理します。
- 正式な退職日
- 最終出社日
- 有給休暇を取得する期間
- 引継ぎの予定日
たとえば、架空の記入例として、次のように日付をカレンダーへ置いてみます。
- 3月14日:引継ぎ完了予定
- 3月17日:最終出社
- 3月18日〜31日:所定労働日に有給休暇を取得
- 3月31日:退職日
- 4月1日:転職先へ入社
実際の日程は、勤務日・休日と有給休暇の残日数を確認して整理します。退職日だけ先に決めて、残った日数へ無理やり引継ぎと有給休暇を詰め込まないことが重要です。
転職先が決まっている場合は、入社日から逆算して現在の会社のスケジュールを整理します。
転職先の入社日や労働条件をまだ最終確認していない場合は、次の記事で確認する項目を整理してください。

2.有給休暇の残日数を確認する
次に、有給休暇が何日残っているか確認します。残日数、希望する取得日、残っている業務、最終出社日を整理してください。
厚生労働省は、退職すると年次有給休暇の権利は退職日で消滅すると説明しています。残っている年休を使う場合は、退職日までの取得となります。
有給休暇を取得したい場合は、希望する取得日を早めに上司や人事へ伝え、残っている業務や引継ぎの量・体制を確認します。
引継ぎが多い場合も、有給休暇をあきらめる前提ではなく、誰に何を引き継ぐか、いつまでに終えるかを早めに相談して調整します。
退職日を越えて取得時期を変更することはできません。引継ぎのために退職日を遅らせるよう打診されても、応じるかどうかは本人の判断です。
申請方法や社内手続きは人事・総務や就業規則で確認し、取得をめぐって困った場合は労働局などの公的相談窓口へ相談してください。
3.引継ぎは「次に必要な情報」を整理する
引継ぎでは、自分が担当していた仕事について、退職後に確認が必要になりそうな情報を整理して共有します。
後任者が未定の場合も、自分が分かる範囲で進捗・期限・資料の場所・未解決事項を残しておけば、必要な情報の抜け漏れを減らせます。
- 担当業務と現在の進捗
- 次にやることと期限
- 関係者と連絡先
- 資料の保存場所
- 定例会議
- 未解決の課題と注意点
単に「A社案件を担当しています」と書くより、次のように整理すると引き継ぎやすくなります。以下は、引継ぎ資料の架空の記入例です。
- 案件名:A社システム更改
- 現在地:テスト工程
- 次の作業:テスト結果確認
- 期限:10月15日
- 顧客窓口:A社○○部
- 資料:社内共有フォルダ○○
- 未解決:接続試験2件
- 次回会議:10月12日14時
引継ぎ資料は長く書くことより、仕事を再開するために必要な情報を揃えることを優先します。引継ぎ先や業務の分担は、上司と確認して進めます。
4.自分しか持っていない情報を共有する
退職後に「そのファイルはどこですか」「顧客との経緯が分かりません」とならないよう、最終出社前に次を確認します。
- 個人フォルダやローカルPCにしかない業務資料
- 自分だけが知っている手順
- 自分だけが把握している顧客との経緯
- 自分だけが参加している定例会議
- 共有されていない未解決事項
必要な業務情報は、会社が指定する保存場所や引継ぎ資料へ移します。
会社の業務データを私物PCや個人クラウドへ持ち出したり、自己判断で削除したりせず、会社のルールに従ってください。
5.社内外の「次の連絡先」を確認する
顧客、取引先、社内関係部署、プロジェクトメンバー、定例会議の参加者などにも、担当変更の案内が必要になる場合があります。
単に「退職します」と伝えるだけでなく、「今後は○○が担当します。○月○日以降の連絡先はこちらです」と案内できるようにします。案内の時期と内容は上司に確認してください。
後任者がまだ決まっていない場合は、会社側の窓口を上司と確認します。退職後も自分の個人連絡先を業務窓口にする前提にはしません。
6.会社から借りているものを一覧にする
退職日が決まったら、会社から貸与されているものを一覧にします。
- ノートPC・スマートフォン
- 社員証・入館証・鍵
- セキュリティトークン
- 会社名義のカード
- 制服
- 周辺機器・その他の貸与備品
在宅勤務をしている場合は、自宅のディスプレイ、ヘッドセット、ルーター、ドッキングステーションなども確認してください。
最終出社日に探し始めず、返却日・返却先・返却方法を確認します。郵送する場合は、送付先や梱包・送料の扱いも会社へ確認しておきます。
7.会社へ返すものと、自分が受け取るものを分ける
返却物だけでなく、会社から受け取る書類も整理します。
給与所得の源泉徴収票
年の途中で退職した場合、給与所得の源泉徴収票は退職の日以後1か月以内に交付することとされています。年内に再就職する場合は、転職先から提出を求められることがあります。
受取方法を確認し、郵送される場合は会社が把握している住所が正しいか確認してください。
雇用保険被保険者証
ハローワークは、できれば在職中に雇用保険被保険者証の有無を確認するよう案内しています。転職先から確認を求められたときに慌てないよう、保管場所を確認します。
離職票
退職後に雇用保険の基本手当を申請する可能性がある場合は、離職票の発行と受取方法を確認します。
会社が作成する離職証明書の離職理由なども確認してください。離職票が交付されない場合や、離職理由が実態と異なる場合は、住所地を管轄するハローワークへ相談できます。
退職証明書
退職証明書が必要な場合は会社へ請求できます。労働基準法22条では、使用期間、業務の種類、地位、賃金、退職事由などについて請求があった場合、使用者は遅滞なく交付しなければならないとされています。請求していない事項を記載してはならないとも定められています。
「全部もらっておけばいい」と決めるのではなく、転職先や公的手続きで必要な書類を確認しましょう。
8.退職日の翌日から健康保険がどうなるか確認する
勤務先の健康保険は、退職による資格喪失日が原則として退職日の翌日になります。退職日と転職先での加入日を並べて確認してください。
退職日の翌日から転職先の健康保険へ加入する場合
転職先の案内に従って必要な情報や書類を提出します。入社日だけでなく、健康保険の加入対象になるかも確認してください。
新しい健康保険への加入まで空白期間がある場合
協会けんぽは、退職後の選択肢として任意継続、国民健康保険、家族の健康保険の被扶養者となる方法を案内しています。加入条件、保険料、家族構成などによって選択は変わります。
任意継続を検討する場合は、加入中の保険者の最新案内を確認してください。協会けんぽでは、資格喪失日の前日までに被保険者期間が継続して2か月以上あり、資格喪失日から20日以内に申出書を提出することが条件です。
20日目が土日・祝日の場合は翌営業日となり、郵送は期限内の到着が必要です。
国民健康保険は住所地の市区町村、被扶養者の手続きは家族の加入先へ確認します。資格喪失を証明する書類が必要かどうかも、手続き先へ確認してください。
9.転職まで空白期間があるなら年金も確認する
退職して厚生年金に加入しなくなり、次の勤務先への加入まで期間が空く場合は、国民年金の手続きを確認します。
日本国内に住む20歳以上60歳未満で、第2号・第3号被保険者に該当せず、第1号被保険者への切替対象となる場合は、自分で加入手続きを行います。日本年金機構の案内では、提出期限は退職日の翌日から14日以内です。
配偶者の扶養に入る場合や、年齢・年金受給状況によって扱いが異なる場合があります。第3号被保険者に該当する場合は、配偶者の勤務先を通じて手続きします。
自分がどの区分になるか分からない場合は、市区町村の国民年金窓口または年金事務所へ確認してください。
10.最終出社日の前にチェックリストを確認する
引継ぎ
- □ 担当業務・現在の進捗を一覧にした
- □ 次の作業・期限・未解決事項を共有した
- □ 資料の保存場所を共有した
- □ 引継ぎ先または会社側の窓口を確認した
- □ 顧客・関係部署への案内について上司と確認した
日程
- □ 退職日と最終出社日を確認した
- □ 有給休暇の残日数と希望する取得日を確認した
- □ 引継ぎの日程・体制を相談した
- □ 転職先の入社日と調整した
返却物
- □ PC・スマートフォン
- □ 社員証・入館証・鍵
- □ セキュリティ機器・会社カード
- □ 自宅にある貸与備品
- □ その他会社から指定されたもの
- □ 返却先・方法・期限を確認した
受け取る書類
- □ 源泉徴収票の受取方法を確認した
- □ 雇用保険被保険者証の所在を確認した
- □ 必要なら離職票の発行を確認した
- □ 必要なら退職証明書を依頼した
退職後の制度
- □ 退職翌日からの健康保険を確認した
- □ 必要な加入手続き・期限・書類を確認した
- □ 必要なら国民年金の手続きを確認した
- □ 不明点を人事・総務または公的窓口へ確認した
必要な情報を共有し、手続きの抜け漏れを減らす
退職前は次の仕事の準備もありますが、業務情報の共有、会社のものの返却、必要書類の確認、退職後の手続きを分けて整理すると、直前の慌ただしさを減らせます。
円満退職とは、最後にきれいな言葉を残すことだけではありません。必要な情報を共有し、自分自身の退職手続きの抜け漏れを減らした状態で退職日を迎えることが大切です。
転職先の入社日や仕事内容、年収、勤務条件がまだ曖昧な場合は、それぞれを確認し、入社準備と退職準備をつなげて進めてください。
参考情報
制度・期限の確認日:2026年10月4日。実際の手続きでは各機関の最新案内をご確認ください。

