Amazon Web Services(AWS)でLoop面接を担当していた頃、私は何十人もの候補者と向き合いました。
Loop面接が終わり、候補者が「ありがとうございました」と言ってZoomを出ていく。
その後の採用会議で、Bar Raiser(BR)やHiring Manager(HM)を含めた採用会議で、面接官同士の率直な議論が始まります。ここが採用検討の本番です。
「技術力は申し分ない。」
「経験も十分だ。」
「でも、私は一緒に働く姿がイメージできない。」
逆に、
「資格は少ないけれど、この人は伸びると思う。」
そんな会話が交わされることも珍しくありませんでした。
転職活動をしていると、「面接ではこう答えれば受かる」「この質問にはこの回答が正解」といった情報をよく見かけます。
しかし、実際に面接官としてその場にいた私が感じていたのは、もっと違うことでした。
面接に正解はありません。
ある質問への回答が、Aさんには高評価となり、Bさんには物足りなく映ることもあります。
だからこそ、面接官は一つひとつの回答だけで判断しているのではありません。
私たちが見ていたのは、その人が仕事でどのように考え、困難に向き合い、周囲と協力しながら成果を出していく人なのかということです。
私はAmazon Web ServicesでLoop面接を担当した後、現在はITコンサルティング会社で採用にも携わっています。そして、自分自身も8回の転職を経験しました。
採用する側と、採用される側。
両方の立場を経験した今だからこそ、はっきりと言えることがあります。
面接とは、自分を良く見せる場ではありません。
「この人と一緒に働きたい」と面接官に思ってもらう場です。
この記事では、私が実際に見てきた採用の現場をもとに、技術力が高くても採用されなかった人、経歴は目立たなくても高く評価された人、その違いを具体的なエピソードとともにお伝えします。
この記事でわかること
- Amazon Web ServicesのLoop面接で実際に見られていたポイント
- 技術力が高くても不採用になる理由
- 採用担当が「一緒に働きたい」と感じる人の共通点
- 明日の面接から実践できる考え方
面接が終わり、採用レポートを書く。本当の評価はここから始まる
候補者と面接が終わると空気は一変します。
面接中は笑顔で質問していた面接官も、ここからは率直な意見整理しまとめます。
転職活動中の方は、「面接で何を答えたか」がすべてだと思っているかもしれません。
しかし、実際の評価は、質問ごとに点数を付けて終わりではありません。
それぞれの面接官が、
「私はこのように感じた。」
「この点が気になった。」
「ここは高く評価したい。」
という根拠を持ち寄り、一人の候補者について議論します。
ここで印象的だったのは、技術の話だけで終わることは、ほとんどなかったことです。
もちろん、
「AWSの理解は十分だった。」
「設計経験も豊富だった。」
という評価は出ます。
しかし、そのあと必ずと言っていいほど話題になるのは、
「この人は実際の現場でどう行動するだろう。」
ということでした。
例えば、
問題が起きたとき、周囲へ相談できる人なのか。
自分の判断に固執せず、人の意見を聞ける人なのか。
失敗したあとに、同じことを繰り返さない人なのか。
こうした話になると、面接官全員が自分の面接で感じたことを話し始めます。
ある面接官は、
「私の質問では、自分の失敗を素直に認めていました。」
と言います。
別の面接官は、
「私の質問では、他部署の責任ばかり話していました。」
と言います。
すると、その二つの情報を合わせて、
「状況によって受け答えが変わる人なのか、それとも質問の内容による違いなのか。」
という議論になります。
読者の中には、
「面接は一問一答で評価される。」
と思っている方もいるでしょう。
しかし、私の経験では違いました。
評価されるのは”回答”ではなく、一貫性です。
面接で話す内容は、職務経歴書と別に作るものではありません。
職務経歴書から伝わる人物像と、面接で説明する経験や強みに一貫性があることが重要です。

そして質問が変わっても、
仕事への向き合い方がぶれない人は、面接官全員の評価もぶれません。
逆に、質問ごとに人格が変わるような受け答えをする人は、
「本来はどちらなのだろう。」
という疑問が残ります。
私が何度も感じたのは、
採用とは「優秀な人」を探す作業ではないということです。
安心して仕事を任せられる人を、複数の面接官が納得して採用する。
そのための議論が、候補者が退室したあとに行われていました。
技術力は高いのに、不採用になった人
私が面接で最も驚いたのは、「技術力」と「採用結果」が必ずしも一致しないことでした。
転職活動をしている方の多くは、
「技術力が高ければ受かる。」
そう考えていると思います。
私も面接官になるまでは、そう思っていました。
しかし、実際には違いました。
今でも印象に残っている候補者がいます。
AWSの知識は豊富でした。
複数のAWS認定資格を持ち、大規模な設計・構築経験もありました。
質問への回答も速く、技術的な誤りはほとんどありません。
正直に言えば、
「ここまで技術力が高い人なら採用だろう。」
そう感じていました。
ところが、面接を進めるうちに、私の印象は少しずつ変わっていきました。
私はこう質問しました。
「これまでで、一番大変だったプロジェクトを教えてください。」
候補者は障害対応について説明してくれました。
内容は論理的で、とても分かりやすいものでした。
そこで、もう一歩踏み込んで質問しました。
「その経験を振り返って、ご自身が改善できたことは何だと思いますか。」
候補者は少し考えたあと、
「特にありません。」
と答えました。
そして続けて、
「設計した別チームの問題でした。」
「営業がお客様との認識を合わせられていませんでした。」
「レビュー体制にも問題がありました。」
と説明しました。
話の内容に矛盾はありません。
実際に、そのとおりだったのかもしれません。
ですが、その瞬間、私の中には別の疑問が生まれました。
「この人は、自分自身を振り返ることができる人だろうか。」
仕事では、自分だけが悪いトラブルはほとんどありません。
同じように、
自分だけが正しいトラブルも、ほとんどありません。
だから私は、
障害対応の説明そのものよりも、
「あのとき、自分なら何を変えられただろう。」
という視点を持っているかを見ていました。
面接では、技術的な正解を知りたいわけではありません。
知りたいのは、その人の仕事への向き合い方です。
失敗を誰かの責任として終わらせる人なのか。
それとも、
自分にできる改善を探し続ける人なのか。
その違いは、数年後には大きな差になります。
だから私は、この候補者の技術力は高く評価しながらも、
「一緒に働く姿」が最後まで思い浮かびませんでした。
私は面接官をしていて何度も感じました。
採用は、「今、一番優秀な人」を選ぶ仕事ではありません。
5年後も成長し続けている姿を想像できる人を選ぶ仕事です。
だからこそ、技術力だけでは採用は決まりません。
仕事への向き合い方が、それ以上に評価されることがあるのです。
経歴は目立たないのに、高く評価された人
反対に、私が「この人は採用したい」と強く感じた候補者もいました。
その方は、決して派手な経歴ではありませんでした。
有名企業の出身でもなく、大規模プロジェクトを何年も経験していたわけでもありません。
AWSの経験も、他の候補者と比べると決して長いとは言えませんでした。
書類だけを見れば、もっと華やかな経歴の候補者は何人もいました。
しかし、面接が始まって数十分で、この方の印象は大きく変わりました。
私が質問したのは、
「これまでで一番失敗した経験を教えてください。」
という、ごく一般的な質問です。
その方は少し考えたあと、静かに話し始めました。
「当時は自分の判断が正しいと思い込み、周囲の意見を十分に聞きませんでした。」
「結果として、お客様にもチームにも迷惑をかけました。」
ここまでは、多くの候補者が話します。
違ったのは、その後でした。
その方は、
「それ以来、自分の考えを説明する前に、相手の考えを最後まで聞くことを意識しています。」
「今でも失敗することはありますが、同じ失敗だけは繰り返さないようにしています。」
と続けました。
私は、その言葉が強く印象に残っています。
話し方が上手だったからではありません。
完璧な回答だったからでもありません。
失敗を隠そうとせず、自分の成長につなげた過程が自然に伝わってきたからです。
面接では、自分を良く見せようとする人は少なくありません。
失敗を小さく見せたり、他人の責任として説明したりする人もいます。
しかし、不思議なことに、そのような話し方は面接官には伝わります。
一方で、自分の失敗を正直に認め、
「だから今はこう変えています。」
と話せる人には、不思議な説得力があります。
私は、この候補者の回答を聞きながら、
「この人は入社後も成長し続けるだろう。」
と感じました。
実際の仕事では、誰でも失敗します。
重要なのは、失敗しないことではありません。
失敗から学び、次の行動を変えられることです。
面接官が見ているのも、そこです。
私は何度も面接を担当しましたが、最後まで印象に残る候補者には共通点がありました。
それは、完璧な人ではありません。
自分を客観的に見つめ、成長し続けられる人でした。
だから私は今でも、面接対策として「完璧な回答」を暗記することは勧めません。
それよりも、
自分が経験した出来事を振り返り、「あの経験から何を学び、今はどう変わったのか」を、自分の言葉で語れるように準備してほしい。
それが、採用につながる一番の近道だと考えています。
採用担当が見ている4つのポイント
ここまで、技術力が高くても採用されなかった人と、経歴は目立たなくても高く評価された人についてお話ししました。
では、その違いは何だったのでしょうか。
私が面接官として何度も感じたのは、採用される人には共通する特徴があるということです。
1. 自分の経験を、自分の言葉で話せる
面接では、きれいな答えを期待しているわけではありません。
むしろ、テンプレート通りの回答はすぐに分かります。
本当に経験したことを話している人は、細かな状況や、そのとき何を考えていたのかまで自然に説明できます。
こちらが少し質問の角度を変えても、話の軸がぶれません。
一方で、面接対策本の回答を暗記している人は、少し深掘りすると話が止まってしまいます。
だから私は、「うまく話せる人」よりも、「本当に経験したことを話している人」を高く評価していました。
2. 自分の成果だけでなく、チーム全体を語れる
仕事は一人では完結しません。
そのため私は、
「あなたは何をしましたか。」
だけではなく、
「周囲はどのように動きましたか。」
という視点でも話を聞いていました。
採用したいと思う人は、
自分の成果を話しながらも、
自然に同僚や上司、お客様への感謝や協力について話します。
逆に、
「私が全部やりました。」
という話ばかり続くと、
本当にそうだったのだろうか、と感じてしまいます。
優秀な人ほど、自分一人の手柄にしない。
これは、私が何度も感じたことです。
3. 分からないことを、分からないと言える
意外に思われるかもしれませんが、
私は「分かりません」という回答で評価を下げたことは、ほとんどありません。
評価が下がるのは、
知らないことを知っているように話したり、
話を大きくしてごまかしたりすることです。
ITの仕事では、すべてを知っている人はいません。
だからこそ、
分からないことを認め、
「確認します。」
「調べます。」
「経験はありませんが、こう考えます。」
と言える人の方が、実際の現場では信頼できます。
面接でも、その姿勢は伝わります。
4. 一貫性がある
私が最後に確認していたのは、一貫性でした。
職務経歴書に書かれている内容。
自己紹介。
失敗談。
成功体験。
志望理由。
これらを別々に評価していたわけではありません。
一人の人物として、矛盾がないか。
そこを見ていました。
途中で価値観が変わったり、
質問によって人物像が変わったりすると、
「本当はどちらなのだろう。」
という疑問が残ります。
反対に、一つひとつの話が自然につながる人は、
安心して一緒に働く姿を想像できます。
面接官は、あなたを落とすために質問しているわけではありません。
限られた時間の中で、
「この人と来週から一緒に仕事をしたいか。」
その答えを探しています。
その視点を理解すると、面接対策は大きく変わります。
「正解を探す」のではなく、
「自分という人物を、矛盾なく伝える準備をする」
ことが、最も効果的な面接対策になるのです。
明日の面接で確認してほしい5つのポイント
もし、この記事を読んでいるあなたの面接が明日だとしたら、私なら次の5つだけを確認します。
- 最初の30秒で結論から話せるか。
- 「チーム」ではなく、「自分が担当したこと」を具体的に説明できるか。
- 失敗談と、その後の改善まで話せるか。
- 転職理由が「前職への不満」で終わっていないか。
- 面接官に質問したいことを最低1つ用意しているか。
この5つができていれば、面接で大きく失点する可能性はかなり低くなります。
面接官は、完璧な人を探しているわけではありません。
一緒に成長できる人を探しています。
この意識だけでも、面接で伝わる印象は大きく変わります。
例えばAmazonの面接でも、回答例を暗記するより、自分の経験を深掘りされても説明できる状態にすることが重要です。
まとめ|面接官は「完璧な人」を探しているわけではない
mazon Web Services(AWS)でLoop面接を担当していた頃、私は多くの候補者と向き合いました。
その経験を通じて、今でも変わらず思うことがあります。
採用される人は、最も優秀な人とは限らない。
もちろん、経験や実績、資格は評価されます。
しかし、それだけで採用が決まることはありません。
面接官が最後に考えているのは、とてもシンプルです。
「この人と一緒に働けるだろうか。」
その一点です。
だから私は、面接対策として「完璧な答え」を用意することは勧めません。
それよりも、
- 自分はどのように考えたのか。
- 失敗から何を学んだのか。
- その経験を今の仕事にどう活かしているのか。
これらを、自分の言葉で話せるように準備してください。
暗記した回答にはない説得力が、そこにはあります。
私自身、採用する側と採用される側の両方を経験してきました。
だからこそ、自信を持って言えます。
面接は、自分を取り繕う場ではありません。
あなたがどのように仕事と向き合い、どのように成長してきたのかを伝える場です。
その姿勢が伝われば、面接官は必ず見ています。
最後に
この記事は、私がAmazon Web ServicesでLoop面接を担当した経験と、その後ITコンサルティング企業で採用に携わり、自身も8回の転職を経験する中で感じたことをもとに執筆しました。
面接には守秘義務があります。そのため具体的な質問内容や評価基準など公開できない情報もあります。
一方で、「面接官は何を見ているのか」「どのような人が評価されるのか」という本質は、経験者だからこそ伝えられると考えています。
この記事が、これから転職活動に挑戦する方にとって、単なる面接対策ではなく、自分自身のキャリアを見つめ直すきっかけになれば幸いです。

このシリーズについて
今後も、Amazon Web ServicesでのLoop面接経験や、現在の採用現場で感じていることをもとに、一般論ではなく「採用する側の視点」から転職に役立つ情報を発信していきます。
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